年齢、家族歴、体型、生活習慣...あなたのリスクを簡単にチェックしてみましょう。
骨粗鬆症は、突然やってくるものではありません。さまざまな要因が、長い時間をかけて骨に影響を与えていきます。
大きく分けると、リスク要因には2つの種類があります。
「変えられないもの」を知ることで、自分がどのくらい注意したほうがよいかの目安になります。「変えられるもの」を知ることで、今日からの行動が変わります。
どんなリスク要因があるかを知ることは、怖がるためではなく、上手に付き合うための第一歩です。
年齢を重ねるほど、骨を作る力はゆるやかに弱くなっていきます。「骨は生きている」の記事でご紹介したように、骨量は30代半ばをピークに少しずつ減っていくのが自然な流れです。
女性は男性に比べて骨粗鬆症になりやすいとされています。これは、もともと骨量が少ないことに加え、閉経後に女性ホルモン(エストロゲン)が減ることで骨の分解が一時的に速まるためです。「女性ホルモンと骨の深い関係」の記事で詳しくご紹介しています。
ただし、男性にも骨粗鬆症は起こります。「女性の病気」と決めつけないことが大切です。「男性の骨粗鬆症」の記事もあわせてご覧ください。
ご両親、とくにお母さまが骨粗鬆症と診断されていたり、背中が丸くなっていたり、大腿骨(だいたいこつ=太ももの付け根の骨)を骨折されたことがある場合、ご自身もリスクが高めである可能性があります。
骨の質や量には遺伝的な要素が関わっていると考えられています。この項目は聞き方によって価値が変わるので、あとでくわしくご説明します。
小柄で体重が軽い方は、骨にかかる負荷が少ないため、骨量が少ない傾向があるとされています。BMI(体格指数)が18.5未満の「やせ型」は、骨粗鬆症のリスク要因のひとつとして知られています。
50歳より前に閉経を迎えた方は、エストロゲンの保護作用が早くから失われるため、骨量の減少が早く始まる可能性があります。手術で卵巣を摘出された方も、同じように考えられています。

これらは自分ではコントロールできない要因ですが、知っておくことで「検査を受けてみよう」という行動につながります。
ここからは、生活習慣の見直しで改善が期待できるリスク要因です。
カルシウムは骨の主な材料、ビタミンDはカルシウムの吸収を助ける大切な栄養素です。日本人はカルシウムの摂取量が推奨量に達していないことが多いと報告されています。
骨は、適度な負荷がかかることで強さを保つ性質があります。体を動かす機会が少ないと、骨への刺激が減り、骨量の低下につながることがあります。
大量の飲酒は、骨を作る細胞(骨芽細胞)の働きを弱め、カルシウムの吸収にも影響を与えるとされています。
喫煙は、骨の代謝にさまざまな形で悪影響を及ぼすと考えられています。また、閉経を早める可能性も指摘されています。
コーヒーや紅茶を1日に何杯も飲む習慣がある方は、カルシウムの排泄が増える可能性があります。1日2〜3杯程度であれば大きな心配はないとされていますが、極端な量は控えたほうがよいかもしれません。
塩分が多い食事は、尿からのカルシウム排泄を増やすことが知られています。味付けの濃い食事が習慣になっている方は、少し意識してみるとよいかもしれません。
関節リウマチや喘息、膠原病(こうげんびょう)などの治療で、ステロイド薬(副腎皮質ホルモン)を長期間使用している場合、骨量が減りやすくなることがあります。これは「ステロイド性骨粗鬆症」と呼ばれ、主治医による管理が特に大切です。「ステロイドと骨」の記事でくわしくご説明しています。

変えられるリスク要因は、逆に言えば「今日から少しずつ改善できるポイント」でもあります。
ここまで11個の項目を並べてきました。でも、これらは横一列ではありません。医師が「この方は治療を始めたほうがよい」と考えるとき、項目ごとに重みを変えて見ています。
チェックの数を数えるだけでは、この差が見えません。おおまかには、次の3段階と考えてみてください。
| 重さ | あてはまる項目 | 意味 |
|---|---|---|
| とくに重い | 軽い転倒などで骨折したことがある/背骨や太ももの付け根の骨折歴/ステロイド薬の長期使用/骨を弱くする病気がある | それ1つで、検査や治療の相談を始める理由になります |
| 重い | 親(とくに母親)の太ももの付け根の骨折歴/早期閉経・卵巣摘出/BMI 18.5未満/年齢が高い | 骨密度の値と組み合わせて判断されます |
| 積み重なって効く | 食事・運動・喫煙・飲酒・塩分・カフェイン | 1つだけで治療の判断が変わることは多くありませんが、数が重なると差が出ます |
この考え方は、医師が使う骨折リスク評価ツールFRAX®(フラックス)の作られ方にも表れています。FRAX®は年齢・体格・骨折歴・家族歴などをそれぞれ別の重みで計算し、今後10年間の骨折の確率を推計します。日本人のデータをもとにした日本版も用意されています。
とくに大切なのは、上の表で「とくに重い」「重い」に入る項目のいくつかは、骨密度の値とは別に意味を持つということです。骨密度検査だけでは拾えない情報を持っているので、検査を受けたあとでも聞かれます。
FRAX®の使い方そのものは、「FRAXとは」の記事でくわしくご説明しています。ここでは「項目ごとに重みが違う」という考え方だけ覚えていただければ十分です。
チェックリストのなかで、もっとも重い項目です。ここだけは、少していねいにご説明します。
立った姿勢からの転倒、あるいはそれ以下の弱い力で起きた骨折を、脆弱性骨折(ぜいじゃくせいこっせつ)と呼びます。
こうした「本来なら折れないはずの力」で折れているとき、それは骨がもろくなっているサインと考えられています。
一方で、交通事故や高いところからの転落、スポーツでの大きな衝撃による骨折は、脆弱性骨折には含まれません。健康な骨でも折れる力だからです。
理由は2つあります。
1つめ。骨密度の値にかかわらず診断がつくことがあります。 日本の診断基準では、背骨(椎体=ついたい)または太ももの付け根(大腿骨近位部)に脆弱性骨折がある場合、骨密度の数値によらず骨粗鬆症と診断することになっています。「骨密度は思ったより悪くなかった」場合でも、です。
2つめ。次の骨折につながりやすいことがわかっています。 背骨の骨折が1つあると、次の背骨の骨折が起きるリスクは大きく高まると報告されています。これを「骨折の連鎖」と呼びます。詳しくは「骨折の連鎖を止める」の記事をご覧ください。
やっかいなことに、背骨の圧迫骨折ははっきりした痛みがないまま起こることが多いとされています。「折れたことはありません」とおっしゃる方に、レントゲンで古い骨折が見つかることは、めずらしくありません。
だからこそ、身長の変化や姿勢の変化が手がかりになります。「壁立ちテスト」の記事で、ご自宅でできる確かめ方をご紹介しています。
「母が骨折したことがあります」——この一言だけでは、実はあまり情報になりません。医師が知りたいのは、次の3つです。
親の骨折歴、とくに太ももの付け根の骨折歴は、骨密度の値とは独立して骨折の起こりやすさに関わることが、国際的な研究で示されています。つまり、あなたが骨密度検査を受けて良い結果が出たとしても、この情報は消えません。骨密度検査では測れないものを見ているからです。
だから、検査を受ける前でも、受けたあとでも、聞く価値があります。
改まって尋ねるのは気が引けるかもしれません。こんな切り出し方はいかがでしょうか。
「骨の検査を受けようと思っていて。お母さん、足の付け根を折ったことってあった? 何歳くらいのとき? 転んだだけ?」
お盆やお正月、ご家族が集まるタイミングが、よい機会です。ご本人が覚えていない場合は、きょうだいやご親戚に聞いてみるのも手です。はっきりわからなくても構いません。「入院して手術したらしい」という程度でも、主治医に伝える価値があります。
チェックリストではステロイド薬だけを挙げましたが、骨を弱くする原因はほかにもあります。これらは「続発性(ぞくはつせい)骨粗鬆症」と呼ばれ、もとの病気の治療を受けている科と、骨を診る科が別々になりやすいのが難しいところです。
| 代表的なもの | |
|---|---|
| 病気 | 関節リウマチ/糖尿病/慢性腎臓病/甲状腺・副甲状腺の病気/慢性閉塞性肺疾患(COPD)/胃の手術のあとや腸の病気による吸収の低下/早期閉経・卵巣摘出 |
| お薬・治療 | ステロイド薬(副腎皮質ホルモン)/前立腺がんや乳がんのホルモン療法/一部の抗てんかん薬/一部の糖尿病のお薬 |
当てはまるものがある方は、次の記事もあわせてご覧ください。
お薬手帳が役に立ちます。 複数の科にかかっている方は、整形外科の診察でもお薬手帳をお見せください。骨に影響するお薬に、医師が気づきやすくなります。
背骨の圧迫骨折は痛みなく起こることが多いため、身長の変化が数少ない外からのサインになります。ところが、ご自身では気づきにくいものです。だから、記録しておきます。
若い頃(20〜25歳ごろ)のいちばん高かった身長と比べて、2cm以上縮んでいる場合は、背骨の圧迫骨折が隠れている可能性があるとされています。体重は変わらないのに上着の前がたるむ、ベルトの位置が変わった、といった変化も同じ手がかりです。
気になったら、「壁立ちテスト」の記事の確かめ方を試して、主治医にご相談ください。
以下の項目を読みながら、ご自身に当てはまるものがあるか確認してみてください。
⚠️ ご注意: このチェックは、ご自身の状況を振り返るためのものであり、診断ではありません。結果にかかわらず、気になることがあれば主治医にご相談ください。
とくに重い項目 — 1つでも当てはまれば、主治医にご相談ください
変えられないリスク要因
変えられるリスク要因
このチェックに「正解」や「点数」はありません。数を数えるためのものでもありません。
チェック結果はあくまで参考です。気になる点があれば医師にご相談ください。
「リスクがあるかも」と感じたら、骨密度検査について主治医に相談してみましょう。以下のような方は、とくに検査を受ける価値があるとされています。
多くの自治体では、40歳・45歳・50歳・55歳・60歳・65歳・70歳の節目年齢で骨密度検診を実施しています。お住まいの市区町村の健康診査にも注目してみてください。
検診と検査は同じではありません。 自治体の検診では、手やかかとで測る簡易的な方法が使われることもあります。検診は「ふるいわけ」であり、結果が気になる場合は医療機関での骨密度検査(DEXA検査)につなげることが大切です。検査の受け方・結果の読み方は「骨密度検査(DEXA)のすべて」の記事でご説明しています。
診察の時間は限られています。あらかじめ書き出しておくと、聞き忘れがありません。
チェックがほとんどつかなかった方も、いらっしゃると思います。それは良い知らせです。ただ、2つだけ心に留めておいてください。
1つめ。リスク要因がゼロでも、骨量は年齢とともに減っていきます。 65歳以上の方や閉経後の方は、リスク要因の有無にかかわらず、定期的な検査が勧められています。
2つめ。このチェックで拾えないものがあります。 気づいていない背骨の骨折、まだ診断されていない病気、ご自身が知らないご家族の骨折歴。「当てはまらなかった」は「調べた結果、大丈夫だった」とは違います。
怖がる必要はまったくありません。ただ、節目の年齢で一度測っておく——それだけで十分です。
Q. チェックリストに多く当てはまると、骨粗鬆症ということですか?
いいえ、このチェックリストは診断ツールではありません。当てはまる項目が多いほどリスクが高い傾向にある、というあくまで参考の目安です。しかも、数よりもどの項目に当てはまったかのほうが大切です。骨粗鬆症かどうかは、骨密度検査(DEXA検査)や骨折の有無をもとに医師が診断します。
Q. チェックは1つだけでした。それでも受診したほうがよいですか?
その1つが「とくに重い項目」であれば、はい、ご相談ください。軽い力での骨折歴、ステロイド薬の長期使用、骨を弱くする病気は、それだけで検査を考える理由になります。逆に「お酒を毎日3杯以上」だけであれば、まずは生活の見直しから始めていただいて構いません。
Q. 男性もチェックしたほうがよいですか?
はい、ぜひ確認してみてください。男性の骨粗鬆症は見過ごされがちですが、骨粗鬆症による骨折の2〜3割は男性に起きています。家族歴や生活習慣に心当たりがある方は、主治医にご相談ください。「男性の骨粗鬆症」の記事もご覧いただけます。
Q. リスク要因がなければ安心してよいですか?
リスク要因が少ないことは良い傾向ですが、「ゼロだから絶対に大丈夫」というわけではありません。骨量は年齢とともに自然に減っていきます。65歳以上の方や閉経後の方は、リスク要因の有無にかかわらず、定期的な検査を受けることが推奨されています。
Q. 骨密度検査で「正常」と言われました。もうリスクを気にしなくてよいですか?
骨密度は骨の強さの一部を表すもので、すべてではありません。骨折歴や家族歴、ステロイド薬の使用といった項目は、骨密度の値とは別に意味を持つとされています。とくに糖尿病のある方は、骨密度が正常でも骨折しやすいことが知られています(「骨粗鬆症と糖尿病」の記事)。「正常」と言われても、これらの項目は主治医にお伝えください。
Q. FRAX®(フラックス)という計算ツールを聞いたことがあるのですが?
FRAX®は、WHO(世界保健機関)が開発した骨折リスク評価ツールで、年齢や体格、骨折歴などから今後10年間の骨折確率を推計するものです。日本人のデータにもとづく日本版もあり、主治医が治療の判断に使うことがあります。本記事のチェックリストは、FRAX®のような専門ツールの代わりではなく、「自分の状況を振り返る」ための簡易的なものです。くわしくは「FRAXとは」の記事をご覧ください。
本記事の内容は一般的な医学情報の提供を目的としており、特定の診断・治療を推奨するものではありません。骨の健康について気になることがあれば、主治医にご相談ください。
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医療監修
加藤裕幸(整形外科医・日本整形外科学会専門医)
最終更新:2026年3月18日