ほてり、眠りの浅さ、気分の波。閉経の前後に「何かが変わった」と感じるあなたへ。実はそのとき、骨の中でも静かな変化が始まっています。
50代の女性の外来で、よくこんな言葉を聞きます。
「先生、最近どうも調子が違うんです。うまく言えないんですけど、なんだか体が変わった気がして」
ほてりや汗、寝つきの悪さ、ちょっとしたことでの気分の浮き沈み。更年期のこうした変化は、多くの方が経験します。そして——同じ時期に、目には見えないところで、骨にも変化が起き始めています。
「何かが変わった」その感覚と同じ時期に、骨も静かに変わり始めています。
骨をずっと守ってくれていた「盾」
閉経の前まで、あなたの骨には、頼もしい守り手がいました。女性ホルモン(エストロゲン)です。
エストロゲンは、骨が壊されすぎないように、そっとブレーキをかけてくれる“盾”のような存在でした。ところが閉経を迎えると、この盾が薄くなっていきます。すると、骨を壊すスピードが少し速まる——とくに閉経後の5〜10年は、骨にとって変化の大きい時期になります。
このしくみは、記事のほうで図を使ってていねいに説明しています。
あなたのせいでは、ありません
ここで、いちばんお伝えしたいことがあります。
閉経も、エストロゲンが減ることも、あなたが選んだことでも、何かを怠った結果でもありません。長い間、月経というかたちで体を巡らせ、役割を終えていく——それは、生きていれば誰にでも訪れる、ごく自然な体の移り変わりです。
「私の不摂生のせいかしら」と自分を責める必要は、まったくありません。これは、自然な変化です。
更年期の不調がつらい方もいれば、ほとんど感じない方もいます。どちらでも構いません。ただ、症状の有無にかかわらず、骨の変化は静かに進んでいることがある——それだけ、心の片隅に置いておいていただけたらと思います。
「気づけた今」が、いちばん早い
「何かが変わった」と感じている今は、実はとても良いタイミングです。骨の変化が始まるこの時期に気づけたなら、できることはたくさんあります。
次に病院にかかるとき、更年期の話のついでに、こう聞いてみてください。
「骨密度の検査も、受けておいたほうがいいですか?」
その一言が、これからの骨を守る確かな一歩になります。盾が薄くなったぶんをどう補っていくか——食事や運動でできることは、これからの回で一つずつお話ししていきます。
次回は、「カルシウムさえ摂っていれば大丈夫」という、よくある思い込みについて、一緒に考えてみましょう。
この連載は一般的な情報提供を目的としたものです。診断や治療については、必ず主治医にご相談ください。
監修:加藤裕幸(整形外科専門医/東海大学医学部 医学教育学 教授)